心理カウンセラーつるちゃんのブログ

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連載「私の恋文」第8回。

半年後、歌織ちゃんは寝たきりになり、酸素吸入をしなくてはならなくなりました。

それでも明るく振る舞い、私とも会話を楽しみました。

 

あるとき、

「ウエディングドレス着たかったなあ」

と独り言のように言いました。

しかし、現実的には叶え難い望みでした。

私は聞こえなかったふりをして、策を講じました、

 

合成写真。

パソコンが得意な友人がいたので、頼んでみると可能とのこと。

早速、歌織ちゃんの写真の中から正面で映っているものを選び、

貸衣装屋に行って、特別に写真を撮らせてもらいました。

データを友人に渡して一週間ほどして歌織ちゃんのウエディング姿の

写真が出来上がりました。

今から10年以上前の話ですが、当時はすでにPCでの写真編集は

一般的なものになっていました。なかなかのできばえでした。

そしてそれを今度は器用な女友達に頼んでデコレーションしてもらいました。

 

出来上がった写真を歌織ちゃんのもとへ届けました。

見るなり歌織ちゃんの瞳が潤み、一言、

「ありがとう…。でも鶴添君がいない…」

 

私は一瞬よく聞こえませんでした。

「え?」と聞き直すと、

「隣に鶴添君がいないって言ってるのよ」

「歌織ちゃん…」

「嘘嘘、そんなこと言って本当に隣に写っている写真を

持ってこられても困るから」

 

私はドキドキしながら歌織ちゃんの手を握り、

「元気になったら一緒に写真を撮ろう」

微かですが、確かに歌織ちゃんはうなずきうなずきました。

 

それからしばらくたったある日、妻が言いました。

「歌織ちゃんに会わせて」

「いやあ、それは…」

「心配しないで。バンドの仲間と一緒に行くから」

 

勤労青少年ホームの仲間は事情を知っていましたし、

そのうち何人かは大学時代、歌織ちゃんとも会っていました。

 

妻と歌織ちゃんを知っている仲間と4人で病院に行きました。

「お久しぶりです」「はじめまして」

それぞれ挨拶を交わして、和やかな雰囲気で時間が過ぎて行きました。

 

歌織ちゃんに負担がかかるといけないので15分くらいで、

私以外は帰って行きました。

 

「ごめんね歌織ちゃん、疲れただろう?」

「ううん。みんないい人でよかった」

「そうそう、昨日マンドリンクラブ時代の友達が来たんだよ。はい、

このCDかけて」

CDを再生すると、大学時代、私がゲスト出演したさいの演奏会の模様が

録音されていました。

「俺、ミスタッチしてるんだよなあ」

「大丈夫だったよ。鶴添君ごまかすのも上手なんだもん」

「そうそう、平気な顔をして指揮者を見るんだよな、俺は間違えてないよって」

 

こんなやりとりも次第にできないほど歌織ちゃんの病状は悪化していきました。

 

~第8回終わり~

 

 

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