連載「私の恋文」第7回。
歌織ちゃんの病室を訪れたときはたくさん話をしました。
今考えても、よく話題が尽きなかったなあと思います。
歌織ちゃんの調子の良いときは病院の屋上に車椅子で連れて行き、
街並みを眺めながら語り合いました。
「やっぱり田舎がいいなあ」
「ここだって充分田舎だよ」
「うん。でも私が育った田舎は草原があったの」
「空気が違うの。楽に息ができた」
「そうか。病気のためには空気が綺麗なところがいいね」
「鶴添君と行きたかったなあ」
「……」
「草原でピアノを弾いてなんて言わないわよ」
「私はね。生まれてすぐ施設に預けられたの」
「お父さん、お母さんの顔も知らない」
出してもらったの」
「大学のテキストやマンドリンもみんなお下がりだったのよ」
「施設で育ったなんて知らなかった。ごめんね。なんか振り回しちゃったんだね」
「ううん。私が好きだったんだからいいじゃない」
「……」
「ああっ、勘違いするな!鶴添君のピアノが好きだったんだよ!」
「今度、その草原のある施設へ一緒に行こうよ。車は軽自動車だけど…」
「いやあ、鶴添君、運転下手そうだからなあ」
「なんでわかるの?」
…笑
私は歌織ちゃんのことを全然知らなかったのです。
自分の歌織ちゃんが好きだという気持ちに溺れているだけで。
仕事が休みの日は歌織ちゃんのもとへ行き、
出張の帰りにも立ち寄って、一晩中付き添うこともありました。
さすがに、妻からは不審に思われ問い詰められました。
私は正直に学生時代のこと、今の歌織ちゃんとのこと、
これからも通うつもりだということも伝えました。
「私は5歳も年下の男性(人)と結婚するんだから浮気される覚悟はしていたわ。
でも、今あなたがやっていることは浮気じゃなくて本気だよね」
「……」
「その女性(ひと)はあなたが結婚しているって知ってるの?」
「いや、何も言ってない。俺はもてなかったから独身だと思っているかもれない」
「知らせないことね。心臓が悪いんでしょ?ショックを与えるのはよくないわ」
「あなたが好きなようにしなさい。でも家庭は捨てないでね。
まだ子供達は独立していないし、ローンだって残ってるし」
「……」
「私は許してはいないからね。多分一生許さないと思う。でも最近のあなたは
過労のせいで家にいるときは寝てばかりで私と口もきかなかった。そんな
あなたが元気でいられるのならそれでいい。でも無理はしないでね」
「ごめん…。ありがとう…」
私は涙が止まりませんでした。
~第7回終わり~
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